アルツハイマー病について

 

2004年秋、「痴呆」は「認知症」に用語が変更になりました。

痴呆という言葉は何か人間の尊厳を傷つけるような響きがあったためでしょう。
認知症の患者さんは、物忘れなどの記憶障害がひどくても、人間としての尊厳やプライドは保たれており、それを傷つけるようなことをすると怒ったり、興奮したりされます。

家族を含め、医療者、介護者は病を持った人間として心して接しなければいけないと、改めて「認識」する必要があると思われます。

現在、認知症の患者さんは約160〜170万人とされ、20年後には300万人を超えると予測されています。

以前は脳血管性痴呆が多かったのですが、最近はアルツハイマー病が原因のトップとなっています。

当院でも開院して9年目となりましたが、認知症の患者さんは年々増え続けています。

塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)は認知症の進行を遅くする効果があります。
この薬が出現してから、早期に診断して、少しでも進行を抑えるために、早期治療が勧められています。

アルツハイマー病の診断、治療、また介護を困難にする周辺症状、病名告知などについて最近の話題を提供し考えてみたいと思います。

 

 

・シリーズ第1回 介護を困難にする認知症の周辺症状について

アルツハイマー病ではさまざまな精神症状や行動障害が生じ、患者さんの適応を阻害し、介護者の負担を増すことはよく知られています。

周辺症状は認知症の行動心理学症候 Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)と最近は言われております。

精神症状として
a)妄想(財布や着物を盗られたという物盗られ妄想)
b)幻覚(部屋に子供がいる、猫がいるなど)
c)抑うつ状態
d)焦燥(イライラして落ち着かない)

e)夜間せん妄(夜中に急に騒ぎ出す)
 f)睡眠障害

問題行動として
a)暴言、暴力(ささいなことで声を荒げたり、手を挙げたりする)、喚声(さけび声をあげる)
b)徘徊(無目的に歩き回る)
c)食行動異常
  過食(目の前にある物はなんでも食べてしまう)
  異食(食べ物以外の物も口に入れる)
d)介護に対する抵抗(理由がないのに、入浴や着替えを嫌がる)
e)性的抑制欠如(高齢の妻に要求し、耐えきれず妻は外に逃げる)
 f)収集(下着を押し入れにため込むなど)

機房辺症状(BPSD)に対する家族の基本的な姿勢
a)自尊心を尊重する
  状況判断ができなくても、感情や情緒は豊かに残っているものです。
  自尊心を傷つけるとますます興奮や抵抗することとなります。

b)行動の背景にある心理を洞察する
  心理的な要因を理解し、大らかにとがめないように対応すると安定しやすいものです。

c)患者のペースに合わせ、生活リズムを整える
  患者のゆっくりとしたペースに同調する。見守りして出来ないことは無理に強制しないことです。

d)健康状態を管理する
  感冒や脱水などで容易にせん妄をきたすので、健康管理に気をつけることです。


周辺症状(BPSD)に対する薬物療法
a)幻覚、妄想などの精神症状、暴言、暴力、落ち着きのなさなどの異常行動に対する薬物療法
 a-1)非定型抗精神病薬のリスペリドン(リスパダール)、
    オランザピン(ジプレキサ、糖尿病では禁忌)
 a-2)定型抗精神病薬のハロペリドール(セレネース)、チアプリド(グラマリール)。抗精神病薬で十分な効果のない場合には抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)も検討する。
b)抑うつ状態に対する薬物療法
  パロキセチン(パキシル)やフルボキサミン(ルボックス)などの選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が推奨される。
c)せん妄に対する薬物療法
  ごく少量の非定型抗精神病薬のリスペリドン(リスパダール)0.5g、オランザピン(ジプレキサ)2.5〜5mg、クエチアピン(セロクエル、糖尿病で禁忌)50mgを徐々に増量する。
d)睡眠障害に対する薬物療法
  超短時間作用型 : ゾルピデム(マイスリー)
  短期作用型 : ブロチゾラム(レンドルミンD)、リルマザホン(リスミー)
  中期作用型 : フルニトラゼパム(ロヒプノール)が勧められる。
  夜間の転倒、翌日への持ち越し効果に注意する。